2020年5月26日

デス・ウィッシュ(原題:Death Wish)(アメリカ,2018)

チャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」(1974)のリメイク。職業が,ブロンソン版はやり手のビジネスマンに対して,ブルース・ウィルス版は腕の良い外科医。ブロンソン版に比べて,自警することをポジティブに描きすぎてるところがちょっと気になります。それはおそらく,ブロンソン版の方が,闇夜に現れる謎の男という少し浮世離れしている感じが「虚構的」であるのに対して,今回のリメイク版は,監視カメラやスマホなどの情報機器のせいで「謎の男」は続かない(すぐバレる)ところが「現実的」だからかもしれません。つまり,「現実的」だからこそ,自警をポジティブに描くことに違和感を感じる,ということ。「虚構」なら,まぁ,こういうのもアリか,とどこかで思えるから許せる面もありましょう。結論。やっぱり,ブロンソン版の方が映画として良い。



2020年5月23日

カンフー・ジャングル(原題:一個人的武林)(中国・香港,2014)

ドニー・イェンのカンフーを見せるために作った映画,と言っても過言ではない。あらすじらしいあらすじは,ない。一人天下一武道会をやっている変態カンフー野郎と,その標的となる主人公ハーハウ・モウ。途中,ジャッキーの酔拳がテレビでやっているシーンは,カンフー映画の先達へのリスペクトか。この前亡くなった,かのレイモンド・チョウもチョイ役で出てたので,そういう,カンフー映画関係者総出演的な映画なのでしょう。しかし,ドニー・イェンのカンフーは,いつ観ても美しい。敵の変態野郎とドニー・イェンのカンフーしか記憶に残らない。

ちなみに「武林」は,<武術界>という意味ですね。「一個人的(一个人的)」は,<一人の>って意味なので,原題の意味は「一人の武術界」(一人っきりの武術界,かな)?




2020年5月17日

トレイン・ミッション(原題:The Commuter)(アメリカ・イギリス,2018)

これはややこしい。黒幕が,悪の組織なのか謎のカルト集団なのか,良く分からないが巨大過ぎて恐い。表に出てくるのは謎の女だけ。この女も組織の単なる一員です。黒幕本体は一切語られないし姿も現さないけど,その不気味な黒幕の陰謀に巻き込まれた元警官の保険外交員の話。FBIも絡むけど,本筋ではない。とにかく,この,巻き込まれた元警官が,訳も分からず振り回されながら,少しずつその正義感でもって,なんとか状況を打開しようとする。設定は60歳。タフです。

『アンノウン』(2011)も,同じ監督(ジャウマ・コレッラ=セラ)と主人公(リーアム・ニーソン)。どちらも,なんで主人公がこんなややこしい謎だらけの状況に陥っているのか,観ているこっちが混乱するけど,最後はちゃんと回収されます。だから,似てますね。

『トレイン・ミッション』は日本語タイトル。このタイトルにした意味は分かるけど,原題の「通勤者」の方が味がある。

★★


2020年5月16日

エイリアン・ネイション(原題:Alian Nation)(アメリカ,1988)

宇宙からの「新移民」を受け入れた地球。新移民たちは地球人の日常生活に馴染み,ともに暮らしている。地球人刑事とエイリアン刑事のバディものです。エイリアンは,単純に,言語・文化の違う外国人移民のメタファーであり,さらに,数ある異色タッグの刑事物と構造は同じでしょう。両方ともかあるいはどちらかがどちらかを嫌っていた凸凹コンビが,行動を共にする内に徐々に意気投合し,やがて二人で協力して巨悪を叩く。

とは言いつつ,それなりに楽しめ,最後まで観ることはできました。このエイリアン,生ものしか食べないし,腐った牛乳が酒代わり,急所は脇の下で,海水(塩水)に溶ける。そういえば,頭の模様はナメクジに似ている。なお,筋力や知的能力は人間より優れていることになっている。




続・男はつらいよ(日本,1969)

映画「寅さん」2作目。坪内散歩先生と娘・夏子さんと再開。さらに,生みの親のお菊と再会。そして何より,さくらの子,つまり甥っ子の満男が生まれる。「てめぇ,さしずめインテリだな」も出ます。

散歩先生も死に,夏子にふられ(というか一方的な片思いですが),寅さん散々だなぁ。でも,御前様にたしなめられて,散歩先生の葬式を精一杯仕切るところは(半分は夏子ののためとは言え),ホント,良い奴だなぁ寅さん。

★★★


2020年5月8日

ジョーズ(原題:Jaws)(アメリカ,1975)

ジョーズです。久し振りに見ました。何度見ても飽きない。恐い。よくできてる。

自然の猛威と人間の経済活動。自然の力と人間の営み。新型コロナウィルスに対して緊急事態宣言を出すかどうか(続けるかどうか)で悩む2020年の現代も同じです。

見ないことにしようとする市長を,子どもの頃に見たときは全面的に悪(こいつが元凶)だと思いましたが,大人になって見ると,市長の気持ちも分からないでもないから,すっかり悪人には見えませんでした。でも多分,リスクは大きめに見積もって,早めに対処するのが長期的に見ればベターであることは間違いないような気がします。

★★★


2020年5月3日

十階のモスキート(日本,1983)

交番勤務の冴えない中年警察官。昇進試験を受けて出世しようと目論むけれども,もう20年。離婚された妻から養育費として金を催促され,娘から小遣いをせびられ,バーのママからツケを請求され,競艇で金をすり,唯一の楽しみとしてパソコンを購入するためには金が必要で,やがてサラ金に手を出す。金,金,金。

追い込まれて少しずつ荒んでいく男を,内田裕也が演じる。晩年は「ロケンロール!」と決める怪しいロン毛の爺さんですが,この頃の内田裕也は,寂しげな目がなんとも味があります。それまでの暗い表情から反転して,最後,壊れて走りだすところはとても良かった。走り方がいい。

★★