2020年6月29日

ヘレディタリー/継承(原題:Hereditary)(アメリカ,2018)

こわ。これは恐すぎる。かなりの高評価のホラー映画だったので,どんなもんかと思って観ましたが,こういう映画だったのか。もっとグロいスプラッタ映画かと思っていて,もしあんまり残酷描写が続くようなら観るのを止めようと思っていたけど(ホラーは良いけど残酷で生理的に痛いヤツは嫌),最後まで目が離せませんでした。というか,瞬きするのさえ忘れるぐらい,恐い。もう,そもそも最初からずっとバックの音楽が恐い(笑)。

精神を病んでいた祖母が亡くなり,その娘である母(主人公アニー)も少々心を病んでいたことがあり(自分の父親も兄も病んでいて自殺している),娘の死でどんどん本人も家庭も壊れていく。けど,ただそれだけじゃないのがこの映画のミソ。恐い。

邦題タイトルの「継承」は要らんね。カタカナタイトルはあんまり好きじゃないけど,内容的にも訳しにくいから,「ヘレディタリー」だけで良いと思います。

★★★★


2020年6月25日

NEXT-ネクスト-(原題:Next)(アメリカ,2007)

ラスベガスのありふれたマジックショーで日銭を稼いでいるクリス・ジョンソン。いつもの通りその日暮らしをしていたが,強盗を未然に防いで騒ぎとなり,逃走する羽目に。実はクリスには,2分先の未来が見える。ただし自分に影響することだけ。

核兵器を密輸したテロ組織を追うFBIは,この特殊能力を持つクリスに頼るしかなくなる。でも,自分に影響することしか未来は見えないし,能力だけが望みのFBIに良い様に扱われたくないクリスは,FBIからも逃走することになる。クリスの能力に気づいたテロ組織もまた,クリスを追う。

最後はちょっと面白いエンディングになっている。話はそんなに凝っているわけでもないし,ニコラス・ケイジが(やっぱり)なんとなく変態的なところが気になるけど,簡単には終わらせないところが良かった。

★★


2020年6月22日

地球が静止する日(原題:The Day the Earth Stood Still)(アメリカ,2008)

古典的SF映画「地球の静止する日」のリメイク。邦題は「の」と「が」で区別されてますね。主人公の女性と息子(再婚相手の子ども)の親子関係は,スパイスとして入れてるけど,むしろ邪魔だなぁ。ここで別に親子愛(絆)で泣かせなくても良い。もっと宇宙人の思惑(飛来目的)と人間の浅はかさとのチグハグっぷりで攻めれば良いのに。「地球の」の方は観たことがないので,もし機会があったら,観てみたい。最初の方のキアヌの宇宙人っぷりは,とても良かった。

★★


2020年6月18日

シャイニング(原題:The Shining)(イギリス,1980)

伝説的な恐怖映画。おそらくテレビ放映されていたのを断片的には観たことがありましたが,今回,ちゃんと最初から最後まで初めて観ました。いや,こりゃ恐い。ジャック・ニコルソン,危なすぎる。色んな場面が脳裏に焼きつく。あの着ぐるみの犬人間は何だ?

タイトルのシャイニングは,超能力(予知能力?)のことなんですね。子どものダニーが持ってます。ジャックは気が触れたのか,はたまた,スーパーナチュラルでパラノーマルな邪悪な力に触られたのか。まぁ,ネイティブアメリカンの墓場があったところに豪勢なホテルを立てたらいかんよ。母は普通の人。でも,母強し。

この事件から40年後,という設定で,今年,続編として『ドクタースリープ』という映画が公開されてます。主人公は大人になったダニー。ダニーが『シャイニング』で呼ばれてた「ドック(ドクター)」にちなんでるんだろうなぁ。観てみたい。ちなみに,どちらも原作はスティーヴン・キング。

★★★★



2020年6月16日

死霊のえじき(原題:Day of the Dead)(アメリカ,1985)

ジョージ・A・ロメロの初期ゾンビシリーズ完結編。ゾンビ・アポカリプス後の世界で,なんとか生き延びている数名の軍人たちと研究者たち。地下洞窟に身を隠し,ゾンビの世界で生きるための研究を続けるが,なかなか光明は見えない。

マッドな博士によるゾンビを手なずけよう(意のままに操ろう)とする研究は,そもそものゾンビの元ネタであるハイチのブードゥー教で死体を労働力に使っていたという伝説そのもの。

初期ロメロゾンビ(古典ゾンビ?)は,ゆっくり歩く。決して走らない。そこがまた味があって良い。走ったり力が強かったりだと,それはもう恐ろしい「モンスター」である。ゾンビは「モンスター」かというと微妙に違う気がする。彼らは「元・人間」の「死体」,動く死体なのだ。面倒臭いのだ。しつこいのだ。噛まれたら感染するウィルスキャリア的な存在なのだ。

逃げても無駄,という中でどうやって生きるか。一つの答えは,「受容」である。

ロメロはこの後,20年の時を経て,2005年から再びゾンビ映画を撮ります。「ランド・オブ・ザ・デッド」(2005),「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」(2007),「サバイバル・オブ・ザ・デッド」(2010)。まだどれも観てない。とりあえず,観たい。

しかし,邦題が「死霊のえじき」ってのが凄いね。当時は,「死霊のはらわた」(日本公開1985年)とか「死霊の盆踊り」(日本公開1986年)とか,ゾンビ的スプラッタ映画はみんな「死霊」だった気がする。スティーブン・セガールの映画が全部「沈黙の」になるのと一緒か。

★★


2020年6月15日

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)(原題:War for the Planet of the Apes)(アメリカ,2017)

「創世記」「新世紀」に続くシリーズ完結作?の第三弾「聖戦記」。「創世記」も「新世紀」も見応えのある映画だったので,期待して観ましたが,ほぼ期待通り。面白かったです。オリジナルの「猿の惑星」では,なぜ人間が原始的な(動物的な)生活をしているのか,その理由も明らかになります。エイプ(類人猿)視点で悪としての人間の身勝手さを描くのは,人種差別の問題を明示しているわけですが,民族や宗教の間の争いでもあるし,さらにはそもそも人類とは何か,種とは何かを問うていると感じました。

三作連続で一気に観てみたい。

★★★


2020年6月12日

フォーガットン(原題:The Forgotten)(アメリカ,2004)

14か月前に飛行機事故で死んだ息子のことが忘れられないテリー。在りし日の息子サムが映ったアルバムやビデオを見る毎日。悲しみに暮れている日々を過ごすが,ある日突然,アルバムから写真が消え去り,ビデオテープから映像が消去され・・・。息子を忘れさせようとする夫の仕業と激怒するテリー。夫と,通っていた精神科医は,「息子がいたという妄想」なのだと言う。そんなはずあるわけがない。しかし,隣人も,自分の息子のことを一切覚えていない。

この辺りの物語の触りまではサスペンス。なぜだ!?と気を惹く上手い展開。そして徐々に謎が明かされていく。謎の理由も,これ以外にはなかなか持ってこられない理由と言えば理由であり,ありきたりではあるけれど,許される範囲。ただ,その黒幕がなぜそんなことをしているのかの理由は今ひとつ。急展開してSFに途中するわけだけど,最後,なぜ主人公のテリーは記憶がそのままで,もう一人の主人公アッシュには記憶が残っていないのか(残しておいても良かったのに。ああ,彼らに拉致されたから?)。でも,全体としては面白かった。

★★★


2020年6月4日

ラストエンペラー(原題:The Last Emperor)(イタリア・イギリス・中国,1987)

政治と戦争に翻弄された溥儀の人生もすさまじいですが,この映画は映画としてとてもよくできていて,見飽きません。映像も素晴らしいし,音楽も素晴らしい。何よりジョン・ローンが良い。史実とは違うところも多々あるのかもしれないですが,これはこれで面白かった。坂本龍一も,怪しくて良かった。

たぶん,これ,昔一度見たことがあるような気がするのですが,その頃は溥儀のこともよく分かっていなかったから,感動も少なく,どんな映画だったかよく覚えていませんでした。が,やはり,戦争のことや溥儀の人生を知れば,この映画の意味もまた違って見えてきます。

皇帝の最後は,植物園の庭師です。

★★★