2020年9月20日

映画評は「湯川ポテンシャル。」で

 2018年からこのブログで映画評を書いてきましたが,2020年10月から,私のメインのブログである「湯川ポテンシャル。」の方で書くことにしました。ブログを一つに統一します。

湯川ポテンシャル。: https://yukawa-potential.blogspot.com/

映画評を読んでくれていた方(はそんなにいないと思いますが:笑),今後は「湯川ポテンシャル。」の方をご覧くださいませ。


2020年9月10日

ファイティン!(原題:Champion)(韓国,2018)

 マ・ドンソク兄貴の,腕相撲映画。アメリカで天涯孤独の男マークは,腕相撲が唯一の誇り。でも今は協会と揉めて,クラブの用心棒をしている。そこでも揉めて警備員をして食いつないでいたが,韓国に戻った弟分から,韓国で腕相撲をやらないかと誘いが来る。

「ファイティン!」は(むろん,fightingのことだと思うけど),韓国では,「頑張れ!」とか「ファイト!」って意味みたい。本人が自分を鼓舞するためにも使っていたから,「やってやる!」「いくぞ!」って意味で使うこともあるかも。

いやしかし,マ兄貴の演技は,良いなぁ。ところどころマ兄貴のゴツい身体いじりのギャグが満載で,良いです。最初に見たのは,『新感染ファイナルエクスプレス』ですが,この他,いろいろ良い感じの映画で主演をしていて,見てみたいものばかり。今度,ハリウッドのマーベル映画『エターナルズ』に出演が決まってます。

妹役のハン・イェリも,役にピッタリで良かった。

★★★


2020年9月8日

インターステラー(原題:Interstellar)(アメリカ,2014)

 地球の環境が悪化し,食物の確保が難しくなり,いよいよ地球滅亡の時が迫ってきている。毎日,大規模な砂嵐に見舞われる日々を送っているが,トウモロコシ農家をしていた元宇宙飛行士のクーパーは,密かに存続していたNASAに,偶然が重なって,復帰することになる。

インターステラーとは,「惑星間の」という意味。相対性理論に基づいて,移住先の惑星を探しに宇宙へ飛び立った父クーパーと,時折挟まれる地球に残された娘マーフィーの話で物語は進む。

169分と長いけれど,宇宙空間の場面や惑星探査の場面など,思わず力が入ってしまうリアル描写です。そして,最後は泣ける,なかなか良い話でした。

★★★


2020年9月2日

ジョン・ウィック:チャプター2(原題:John Wick: Chapter 2)(アメリカ,2017)

 キアヌ・リーブス主演のジョン・ウィックシリーズ第二弾(2019年には第三弾が公開されてます)。まぁとにかく,キアヌの近接格闘技のスキルと銃捌きを徹底的にお見せします,という映画でした。

ストーリーはもう,最低限必要なだけで,もう,あとはとにかくずっと追いかけっこ。とにかく敵がわんさか順番に襲ってきます。それをことごとくやっつけていきます。

よくあるハリウッドのアクション映画のように,ドンパチだけとか,最近では香港カンフーアクション導入でテンポの良いパンチキックの応戦ではなく,「投げ技」と「関節技」が多いところがかなりマニアック。どうも,あれ,ロシアの格闘技「システマ」をベースにしてるらしい。マニアックだなぁ(笑)。

銃の種類も扱いもマニアックにこだわってるし,ひたすら玉が出続けるハリウッド式ご都合主義とは違って,ちゃんと弾切れするし,弾切れすると銃そのものを投げつける!(記憶では2回ありました),という徹底ぶり。

その代わり,裏社会の同盟組織の描写がなぜか古めかしく時代ががかっていて,その辺に歴史の重みをもたせてるのかもしれず,また,世の中至るところに息の掛かった人がいて,ニューヨークにも街中至るところに殺し屋がいて,この辺がちょっとやり過ぎ感はあるけれど,映画だからまぁいいか。

★★


2020年9月1日

死霊伝説(原題:Salem's Lot)(アメリカ,1979)

 キング原作,トビー・フーパー監督作品。原題は「セーラムズ・ロット」(田舎町の名前)。ここから「死霊伝説」って,凄い邦題だよね。キングの原作は「呪われた町」。うん,このままが一番良いじゃないか。

ときどき画面がストップしたり暗転したりのは,これ,もともとTV映画だかららしい(ちょうどそこが時間切れ,次回乞うご期待!的なところか)。で,「完全版」は約3時間。

吸血鬼と作家の対決映画です。吸血鬼(バーロウ)がその能力でもって夜な夜なもっと暴れまくるのかと思いきや,比較的あっさりやられます。TV映画だけあって,血みどろのスプラッター(ゴア表現)は少ないけれど,吸血鬼はどれもキモくて怖い。ちょっとゾンビ的(ロメロの「ゾンビ」は1978年公開だし)。あれを子ども時代にTVで見ちゃったら,夢に見るでしょう。

というわけで,3時間は長いけど,それなりに見ることができました。

★★


2020年8月30日

イップ・マン外伝 マスターZ(原題:葉問外伝:張天志)(香港・中国,2018)

 ドニー・イェンの「葉問(イップ・マン)」シリーズ第三弾に登場したチョン・ティンチ(マックス・チャン)のスピン・オフ。

イップ・マンとの詠春拳最強対決に敗れたチョン・ティンチは,道場を閉め,町を去り,小さな食料品店で息子のフォンと清貧に過ごしていた。食料品の配達中にケンカに巻き込まれたチョンは,その因果でマフィアに逆恨みされることに。

ストーリーとは直接関係ないけど,やたら強い(チョンと互角)の殺し屋が出てくるけど,これがなんとトニー・ジャー!アクションキレキレでしびれます。敵ボスはディヴ・バウティスタ(元プロレスラーの俳優)で,ゴリゴリマッチョだけど存在感があって味があります。

物語としてはシンプルですが,カンフー・アクションはキレがあって良いです。

★★



2020年8月24日

ザ・プレデター(原題:The Predator)(アメリカ,2018)

 プレデターの乗った宇宙船が不時着。ヘルメットや腕に装着する武器などを拾った傭兵のクインは,(たぶん)自閉症(たぶん「サバン症候群」という設定でしょう)の息子ローリーとともに,プレデターや軍から追いかけられることに。

プレデターの武器(ギア)が秀逸です。宇宙船などのメカも良い。今思えば,一番最初のシュワちゃんVSプレデターも衝撃的でした(当時,「シュワちゃん,今度は『河童』と戦うらしいぜ」と噂になりました)。見た目はものすごく原始的で獰猛なモンスターなのに,超ハイテクなギアを持っていたりヘルメットを被ってたりするところのギャップが良かった。そして何より,人間を襲う理由が「狩り」であること,それも食べるためではなく,狩ることそのものだというところ(襲った人間を吊しておいたり,頭蓋骨を集めたり)。

その後いくつも続編が出てますが,今回のプレデターはその辺の基本的な設定に丁寧に沿った感じで,ハンター的なところや最強を求めてるところも強調されてて良かった。もう少しプレデターの怖さ(気持ち悪さ)やハンターぶり,メカの使いっぷりが見られたら良かったです。

★★


2020年7月28日

スイス・アーミー・マン(原題:Swiss Army Man)(スウェーデン・アメリカ,2016)

かのダニエル・ラドクリフがヘンテコな死体役の,ヘンテコな映画。無人島に漂着して助けを待つが絶望して自殺しようとしていた主人公ハンクのところに,死体が漂着する。その死体はなんとスイス・アーミー・ナイフばりに便利な機能を持っていた。そのうち会話までできるようになる。孤独をこじらせるとこういうことになります。

★★


2020年7月20日

イコライザー2(原題:The Equalizer 2)(アメリカ,2018)

デンゼル・ワシントン主演のシリーズ2作目。元凄腕CIAエージェント。今は引退してタクシーの運転手をしている(1作目はホームセンターの店員)。法律を免れる目の前の悪を秒殺。今回は,元同僚(上司?)で唯一の理解者であった女史が何者かに殺される。

作中,主人公マッコールは常に読書をしている。モノを縦横に整然と並べないと気が済まない。真面目で神経質なところが,計算ずくの殺人術と相通ずる。この辺の神経質な「秒殺」殺人術の描写は1作目の方が極まっていて,良い。

★★


男はつらいよ フーテンの寅(日本,1970)

シリーズ3作目。湯の山温泉の老舗旅館の女将に惚れた寅さん,番頭として働くことに。今回は,寅さんが人情厚く活躍する場面はあんまり染み込んでこなくて,ひたすら尽くして振られる方が前面に出ていて,切ないんだか可哀想なんだか。

★★


2020年7月13日

ドント・ブリーズ(原題:Don't Breathe)(アメリカ,2016)

原題を直訳すれば,『息を殺せ』でしょうか。「ドント・ブリーズ」ってカタカナだと分かりにくいですね。映画は,かなり恐いです。グロいというか気持ち悪い。恐怖の対象は,盲目の老人です。ただし,元軍人(特殊部隊グリーン・ベレー?)。

大金を隠し持っているという情報から強盗に入ろうとする若い男女三人組。廃れた町の一角にある老人の家は,異常に用心深く施錠され,窓には格子枠が嵌められていた。盲目だし老人だし,大金に目がくらんでいる彼らは,小さな窓枠から侵入する。

殺人マシンの異常な老人をモンスターに置いたのは秀逸。ただ,老人も若者も,どっちもどっちだから,どっちにも同情できませんでした。

★★


マシニスト(原題:The Machinest)(スペイン・アメリカ,2004)

不眠症で1年間まったく寝ていない機械工の男・トレバー。心安まるのは娼婦のスティービーと寝るとき。一方で,空港のカフェに足繁く通う。子持ちのウェイトレス・マリアに会いに行くため。ある日,アイバンという臨時の機械工が声を掛けてくる。と,その男に気を取られて同僚の腕を切断してしまう事故の原因を作ってしまう。

とにかく主人公のトレバーが病的に痩せている。手は石けんでなくてブリーチ(漂白剤)で洗う。どんどんと妄想が広がり,現実なのか幻覚なのか分からなくなる。周りがみんな,グルに思えてくる。精神的に追い詰められていくトレバー。しかし,なんで不眠症になったのか,なんでこんな妄想と幻覚を見るのか,最後に分かる。色々散りばめられた伏線が見事に回収される。

骨と皮だけの痩せぎすの主人公を演じるのは,「バットマンシリーズ」や「リベリオン」のクリスチャン・ベイル。凄い役者根性。

ただし,最初の方,同僚が腕を切断する事故の場面は,要らないかなぁ。事故が起こるとしても,音とかうめき声だけでも十分。ここのショック場面は,なくても十分成立していると思う。

【追記】もう一度観てみた。何度も観たくなる映画です。ただ,上記ショック場面は早送りしました。

★★★★


2020年7月6日

きっと,うまくいく(原題:3 Idiots)(インド,2009)

滅茶苦茶イイ!!原題をそのまま訳せば,「三バカ」。超一流のエンジニアを輩出しているエリート工業大学が舞台。競争や出世で頭がいっぱいの学生,というのもそもそも学長が競争を大いに煽っている。競争に勝つか,それとも死か。そんな競争社会・学歴社会とは正反対の新入生ランチョーと,その相部屋で親友になるファルハーンとラージューの三人の話。10年後の現在と学生時代とが交互に描かれる。痛快です。Aal izz well.

【追記】翌日,また観てしまった。

★★★★★


2020年7月2日

ハワイアン・ドリーム(日本,1987)

また観てしまった。二回目。時任三郎(たつひこ)が若い。ジョニー大倉(しょうじ)も若い。桃井かおり(れいこ)も若い。達彦の恋人カレンはタムリン・トミタ(ベストキッド2に出てた)。撮影はワイキキやホノルル近郊(ダウンタウンの方とか,山の方とか)で行われているので,当時の街の様子が見られて楽しい。

ストーリーもテンポが良いし,刹那的な若者(チンピラ)っぽさが観ていて気持ちいい。「いったい何が不満なんだよ。ここは天国じゃないか」としょうじ。「天国に住めるのは神様だろう。俺は人間なんだよ」とたつひこ。ここんところの下り,良かった。後半,ダイアモンドヘッドが遠くに見える港から「そろそろバカンスも終わりだな」「色々あったけど楽しかった」みたいな感じでささやき合う二人が切ない。

★★★



2020年7月1日

カプリコン・1(原題:Capricorn One)(アメリカ,1977)

ようやく観ることができました。これも伝説の一品ですね。「月面着陸してないんぢゃないか」陰謀論(NASA捏造説)がいつからあるのかは正確には分かりませんが(一節には1974年?),あれを地で行く映画です。というか陰謀論を題材にして映画を作ったのか。いずれにせよ,面白かった。陰謀論もそうですが,これが1977年の作品ってのが凄いです。アポロ計画が1961年から1972年だから,この物語の背景として,もうすでにこの時期には宇宙計画は下火になりつつあったことが分かります。

疑惑を探る雑誌記者が,FBIにはめられて捕まったと思えばすぐ釈放されるのが良く分からなかったけれど,要するにあれは脅し(これ以上首を突っ込むな,いつでも逮捕するぞ,的な),ってことなのかな。

それから,最後に追悼式に笑顔で駆け寄ってくる場面。あれは要らんだろう。息子が「あ,パパだ!」とか何とか叫んでEND,が良かったんじゃないかなぁ。

★★★


2020年6月29日

ヘレディタリー/継承(原題:Hereditary)(アメリカ,2018)

こわ。これは恐すぎる。かなりの高評価のホラー映画だったので,どんなもんかと思って観ましたが,こういう映画だったのか。もっとグロいスプラッタ映画かと思っていて,もしあんまり残酷描写が続くようなら観るのを止めようと思っていたけど(ホラーは良いけど残酷で生理的に痛いヤツは嫌),最後まで目が離せませんでした。というか,瞬きするのさえ忘れるぐらい,恐い。もう,そもそも最初からずっとバックの音楽が恐い(笑)。

精神を病んでいた祖母が亡くなり,その娘である母(主人公アニー)も少々心を病んでいたことがあり(自分の父親も兄も病んでいて自殺している),娘の死でどんどん本人も家庭も壊れていく。けど,ただそれだけじゃないのがこの映画のミソ。恐い。

邦題タイトルの「継承」は要らんね。カタカナタイトルはあんまり好きじゃないけど,内容的にも訳しにくいから,「ヘレディタリー」だけで良いと思います。

★★★★


2020年6月25日

NEXT-ネクスト-(原題:Next)(アメリカ,2007)

ラスベガスのありふれたマジックショーで日銭を稼いでいるクリス・ジョンソン。いつもの通りその日暮らしをしていたが,強盗を未然に防いで騒ぎとなり,逃走する羽目に。実はクリスには,2分先の未来が見える。ただし自分に影響することだけ。

核兵器を密輸したテロ組織を追うFBIは,この特殊能力を持つクリスに頼るしかなくなる。でも,自分に影響することしか未来は見えないし,能力だけが望みのFBIに良い様に扱われたくないクリスは,FBIからも逃走することになる。クリスの能力に気づいたテロ組織もまた,クリスを追う。

最後はちょっと面白いエンディングになっている。話はそんなに凝っているわけでもないし,ニコラス・ケイジが(やっぱり)なんとなく変態的なところが気になるけど,簡単には終わらせないところが良かった。

★★


2020年6月22日

地球が静止する日(原題:The Day the Earth Stood Still)(アメリカ,2008)

古典的SF映画「地球の静止する日」のリメイク。邦題は「の」と「が」で区別されてますね。主人公の女性と息子(再婚相手の子ども)の親子関係は,スパイスとして入れてるけど,むしろ邪魔だなぁ。ここで別に親子愛(絆)で泣かせなくても良い。もっと宇宙人の思惑(飛来目的)と人間の浅はかさとのチグハグっぷりで攻めれば良いのに。「地球の」の方は観たことがないので,もし機会があったら,観てみたい。最初の方のキアヌの宇宙人っぷりは,とても良かった。

★★


2020年6月18日

シャイニング(原題:The Shining)(イギリス,1980)

伝説的な恐怖映画。おそらくテレビ放映されていたのを断片的には観たことがありましたが,今回,ちゃんと最初から最後まで初めて観ました。いや,こりゃ恐い。ジャック・ニコルソン,危なすぎる。色んな場面が脳裏に焼きつく。あの着ぐるみの犬人間は何だ?

タイトルのシャイニングは,超能力(予知能力?)のことなんですね。子どものダニーが持ってます。ジャックは気が触れたのか,はたまた,スーパーナチュラルでパラノーマルな邪悪な力に触られたのか。まぁ,ネイティブアメリカンの墓場があったところに豪勢なホテルを立てたらいかんよ。母は普通の人。でも,母強し。

この事件から40年後,という設定で,今年,続編として『ドクタースリープ』という映画が公開されてます。主人公は大人になったダニー。ダニーが『シャイニング』で呼ばれてた「ドック(ドクター)」にちなんでるんだろうなぁ。観てみたい。ちなみに,どちらも原作はスティーヴン・キング。

★★★★



2020年6月16日

死霊のえじき(原題:Day of the Dead)(アメリカ,1985)

ジョージ・A・ロメロの初期ゾンビシリーズ完結編。ゾンビ・アポカリプス後の世界で,なんとか生き延びている数名の軍人たちと研究者たち。地下洞窟に身を隠し,ゾンビの世界で生きるための研究を続けるが,なかなか光明は見えない。

マッドな博士によるゾンビを手なずけよう(意のままに操ろう)とする研究は,そもそものゾンビの元ネタであるハイチのブードゥー教で死体を労働力に使っていたという伝説そのもの。

初期ロメロゾンビ(古典ゾンビ?)は,ゆっくり歩く。決して走らない。そこがまた味があって良い。走ったり力が強かったりだと,それはもう恐ろしい「モンスター」である。ゾンビは「モンスター」かというと微妙に違う気がする。彼らは「元・人間」の「死体」,動く死体なのだ。面倒臭いのだ。しつこいのだ。噛まれたら感染するウィルスキャリア的な存在なのだ。

逃げても無駄,という中でどうやって生きるか。一つの答えは,「受容」である。

ロメロはこの後,20年の時を経て,2005年から再びゾンビ映画を撮ります。「ランド・オブ・ザ・デッド」(2005),「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」(2007),「サバイバル・オブ・ザ・デッド」(2010)。まだどれも観てない。とりあえず,観たい。

しかし,邦題が「死霊のえじき」ってのが凄いね。当時は,「死霊のはらわた」(日本公開1985年)とか「死霊の盆踊り」(日本公開1986年)とか,ゾンビ的スプラッタ映画はみんな「死霊」だった気がする。スティーブン・セガールの映画が全部「沈黙の」になるのと一緒か。

★★


2020年6月15日

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)(原題:War for the Planet of the Apes)(アメリカ,2017)

「創世記」「新世紀」に続くシリーズ完結作?の第三弾「聖戦記」。「創世記」も「新世紀」も見応えのある映画だったので,期待して観ましたが,ほぼ期待通り。面白かったです。オリジナルの「猿の惑星」では,なぜ人間が原始的な(動物的な)生活をしているのか,その理由も明らかになります。エイプ(類人猿)視点で悪としての人間の身勝手さを描くのは,人種差別の問題を明示しているわけですが,民族や宗教の間の争いでもあるし,さらにはそもそも人類とは何か,種とは何かを問うていると感じました。

三作連続で一気に観てみたい。

★★★


2020年6月12日

フォーガットン(原題:The Forgotten)(アメリカ,2004)

14か月前に飛行機事故で死んだ息子のことが忘れられないテリー。在りし日の息子サムが映ったアルバムやビデオを見る毎日。悲しみに暮れている日々を過ごすが,ある日突然,アルバムから写真が消え去り,ビデオテープから映像が消去され・・・。息子を忘れさせようとする夫の仕業と激怒するテリー。夫と,通っていた精神科医は,「息子がいたという妄想」なのだと言う。そんなはずあるわけがない。しかし,隣人も,自分の息子のことを一切覚えていない。

この辺りの物語の触りまではサスペンス。なぜだ!?と気を惹く上手い展開。そして徐々に謎が明かされていく。謎の理由も,これ以外にはなかなか持ってこられない理由と言えば理由であり,ありきたりではあるけれど,許される範囲。ただ,その黒幕がなぜそんなことをしているのかの理由は今ひとつ。急展開してSFに途中するわけだけど,最後,なぜ主人公のテリーは記憶がそのままで,もう一人の主人公アッシュには記憶が残っていないのか(残しておいても良かったのに。ああ,彼らに拉致されたから?)。でも,全体としては面白かった。

★★★


2020年6月4日

ラストエンペラー(原題:The Last Emperor)(イタリア・イギリス・中国,1987)

政治と戦争に翻弄された溥儀の人生もすさまじいですが,この映画は映画としてとてもよくできていて,見飽きません。映像も素晴らしいし,音楽も素晴らしい。何よりジョン・ローンが良い。史実とは違うところも多々あるのかもしれないですが,これはこれで面白かった。坂本龍一も,怪しくて良かった。

たぶん,これ,昔一度見たことがあるような気がするのですが,その頃は溥儀のこともよく分かっていなかったから,感動も少なく,どんな映画だったかよく覚えていませんでした。が,やはり,戦争のことや溥儀の人生を知れば,この映画の意味もまた違って見えてきます。

皇帝の最後は,植物園の庭師です。

★★★


2020年5月26日

デス・ウィッシュ(原題:Death Wish)(アメリカ,2018)

チャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」(1974)のリメイク。職業が,ブロンソン版はやり手のビジネスマンに対して,ブルース・ウィルス版は腕の良い外科医。ブロンソン版に比べて,自警することをポジティブに描きすぎてるところがちょっと気になります。それはおそらく,ブロンソン版の方が,闇夜に現れる謎の男という少し浮世離れしている感じが「虚構的」であるのに対して,今回のリメイク版は,監視カメラやスマホなどの情報機器のせいで「謎の男」は続かない(すぐバレる)ところが「現実的」だからかもしれません。つまり,「現実的」だからこそ,自警をポジティブに描くことに違和感を感じる,ということ。「虚構」なら,まぁ,こういうのもアリか,とどこかで思えるから許せる面もありましょう。結論。やっぱり,ブロンソン版の方が映画として良い。



2020年5月23日

カンフー・ジャングル(原題:一個人的武林)(中国・香港,2014)

ドニー・イェンのカンフーを見せるために作った映画,と言っても過言ではない。あらすじらしいあらすじは,ない。一人天下一武道会をやっている変態カンフー野郎と,その標的となる主人公ハーハウ・モウ。途中,ジャッキーの酔拳がテレビでやっているシーンは,カンフー映画の先達へのリスペクトか。この前亡くなった,かのレイモンド・チョウもチョイ役で出てたので,そういう,カンフー映画関係者総出演的な映画なのでしょう。しかし,ドニー・イェンのカンフーは,いつ観ても美しい。敵の変態野郎とドニー・イェンのカンフーしか記憶に残らない。

ちなみに「武林」は,<武術界>という意味ですね。「一個人的(一个人的)」は,<一人の>って意味なので,原題の意味は「一人の武術界」(一人っきりの武術界,かな)?




2020年5月17日

トレイン・ミッション(原題:The Commuter)(アメリカ・イギリス,2018)

これはややこしい。黒幕が,悪の組織なのか謎のカルト集団なのか,良く分からないが巨大過ぎて恐い。表に出てくるのは謎の女だけ。この女も組織の単なる一員です。黒幕本体は一切語られないし姿も現さないけど,その不気味な黒幕の陰謀に巻き込まれた元警官の保険外交員の話。FBIも絡むけど,本筋ではない。とにかく,この,巻き込まれた元警官が,訳も分からず振り回されながら,少しずつその正義感でもって,なんとか状況を打開しようとする。設定は60歳。タフです。

『アンノウン』(2011)も,同じ監督(ジャウマ・コレッラ=セラ)と主人公(リーアム・ニーソン)。どちらも,なんで主人公がこんなややこしい謎だらけの状況に陥っているのか,観ているこっちが混乱するけど,最後はちゃんと回収されます。だから,似てますね。

『トレイン・ミッション』は日本語タイトル。このタイトルにした意味は分かるけど,原題の「通勤者」の方が味がある。

★★


2020年5月16日

エイリアン・ネイション(原題:Alian Nation)(アメリカ,1988)

宇宙からの「新移民」を受け入れた地球。新移民たちは地球人の日常生活に馴染み,ともに暮らしている。地球人刑事とエイリアン刑事のバディものです。エイリアンは,単純に,言語・文化の違う外国人移民のメタファーであり,さらに,数ある異色タッグの刑事物と構造は同じでしょう。両方ともかあるいはどちらかがどちらかを嫌っていた凸凹コンビが,行動を共にする内に徐々に意気投合し,やがて二人で協力して巨悪を叩く。

とは言いつつ,それなりに楽しめ,最後まで観ることはできました。このエイリアン,生ものしか食べないし,腐った牛乳が酒代わり,急所は脇の下で,海水(塩水)に溶ける。そういえば,頭の模様はナメクジに似ている。なお,筋力や知的能力は人間より優れていることになっている。




続・男はつらいよ(日本,1969)

映画「寅さん」2作目。坪内散歩先生と娘・夏子さんと再開。さらに,生みの親のお菊と再会。そして何より,さくらの子,つまり甥っ子の満男が生まれる。「てめぇ,さしずめインテリだな」も出ます。

散歩先生も死に,夏子にふられ(というか一方的な片思いですが),寅さん散々だなぁ。でも,御前様にたしなめられて,散歩先生の葬式を精一杯仕切るところは(半分は夏子ののためとは言え),ホント,良い奴だなぁ寅さん。

★★★


2020年5月8日

ジョーズ(原題:Jaws)(アメリカ,1975)

ジョーズです。久し振りに見ました。何度見ても飽きない。恐い。よくできてる。

自然の猛威と人間の経済活動。自然の力と人間の営み。新型コロナウィルスに対して緊急事態宣言を出すかどうか(続けるかどうか)で悩む2020年の現代も同じです。

見ないことにしようとする市長を,子どもの頃に見たときは全面的に悪(こいつが元凶)だと思いましたが,大人になって見ると,市長の気持ちも分からないでもないから,すっかり悪人には見えませんでした。でも多分,リスクは大きめに見積もって,早めに対処するのが長期的に見ればベターであることは間違いないような気がします。

★★★


2020年5月3日

十階のモスキート(日本,1983)

交番勤務の冴えない中年警察官。昇進試験を受けて出世しようと目論むけれども,もう20年。離婚された妻から養育費として金を催促され,娘から小遣いをせびられ,バーのママからツケを請求され,競艇で金をすり,唯一の楽しみとしてパソコンを購入するためには金が必要で,やがてサラ金に手を出す。金,金,金。

追い込まれて少しずつ荒んでいく男を,内田裕也が演じる。晩年は「ロケンロール!」と決める怪しいロン毛の爺さんですが,この頃の内田裕也は,寂しげな目がなんとも味があります。それまでの暗い表情から反転して,最後,壊れて走りだすところはとても良かった。走り方がいい。

★★


2020年4月26日

男はつらいよ(日本,1969)

寅さんシリーズ全48作の第1作。20年ぶりに故郷・葛飾柴又に帰ってくる車寅次郎。

もともと寅さんシリーズは好きで,ちょうど,NHKで放送していた5話のドラマ「少年寅次郎」を録画しておいて見終わったところだった。最終話,桜と別れた柴又の駅から20年後の話として,また一層,良かった。

★★★


2020年4月7日

デイブレイカー(原題:Daybreakers)(オーストラリア/アメリカ,2009)

ヴァンパイア(吸血鬼)ウィルスが蔓延し,大勢がヴァンパイア化し,世界はヴァンパイアが支配している。一方,わずかに残っている人間は絶滅の危機に曝されている。しかし,この状況は,ヴァンパイア社会からすれば,食料である人間の血液の深刻な不足に悩まされているということだ。血液を手に入れられない者は,ヴァンパイア化が進むために凶暴化してしまう。これも大きな社会問題になっている。

主人公のエドは,ヴァンパイア社会の血液学者として,「代替血液」の研究をしている。エドはヴァンパイア化した自分を良しと思っていない。つまり,人間の血液を飲むことを良しとしていない。このため,一刻も早く血液の代替物を完成させたい。そんな折,ある人間が彼に接触してくる。

吸血鬼が支配する近未来の世界を丁寧に描いていて,良かった。その世界での社会経済的問題が「血液不足」というのも面白い。

★★★


2020年3月31日

ザ・ミスト(原題:Dans La Brume)(フランス/カナダ,2018)

原題のDans La Brumeは,「霧の中で」という意味のようです。90分の映画。ある日突然,地下から致死性のガスがあふれて街を覆います。見ている感じだと,だいたい地上4階ぐらいのところまでをガスが霧状に覆い尽くします。4階より上(だいたい建物の屋根部分ぐらい)は無事。主人公夫婦はかろうじて上階に逃れます。

問題はその娘。娘は自己免疫系の疾患のために,空気清浄装置の付いた巨大なカプセルの中で生活しています。建物の2階ぐらいに装置は据えられているので,もちろん,霧(毒ガス)の中。夫婦はなんとかして娘を救い出そうと,酸素ボンベを入手しながら手を尽くすけど上手く行かず・・・。

結末(あるいはメッセージ)は,途中で少し「もしや,そういうことか」と気がつきました。物語中,ずっと霧の上はスッキリ晴天。あえて霧に覆われているところとのコントラストを目立たせるためかと思うので,それはそれで非常に良いのですが,しかし,霧(というか毒ガス)は,雨が降れば消えそうな気もするから,天候が変わるのを待てば良いんじゃないか,と思いました。

しかし,パリの街を覆う濃い霧(毒ガス)内の映像はどうやって作ったのか,そこは圧巻です。90分で,面白く観られました。

★★★


2020年3月30日

ブレードランナー2049(原題:Blade Runner 2049)(アメリカ,2017)

『ブレードランナー』の,35年振りの続編。ハリソン・フォードは,『スター・ウォーズ』でも30年後設定でハン・ソロとして出てくるし,こっちでも同じパタンでの出演なので,ちょっと被る。

『ブレードランナー』の解釈としては,いろいろあって謎めいていて,だから良かった(名作として語り継がれてきた)わけで,でも一応,こうして一つ,最適解的な答えとしての続編は,悪くはない。ただ,物語内では「奇跡」で片付けているけれど,個人的にはこっちに行かなくても良かったかな~。

いくつか良く分からないところもあるので,そのうち再視聴して,理解してみます。

★★


2020年3月19日

トゥルーマン・ショー(原題:The Truman Show)(アメリカ,1998)

二十年ぶり?に見ました。今見ても面白いし,泣けます。やっぱりジム・キャリーが良い。

当時からアメリカではリアリティ番組があったのかもしれないですが,現在も,そして現在の日本も,こういうリアリティ番組が受けています。ただこの「トゥルーマン・ショー」はその極み,全部仕掛けであって,知らないのは当人だけ。普通なら早々に疑うものだけど,生まれたときから仕掛けられていたら,疑わないかもしれない。ジム・キャリーが,素朴で素直な感じが,また哀れを誘います。

モチーフは,カプグラ症候群だとも言われていますが,しかし,「現実はすべて作り物だ(周りはみんなお芝居している)」的な想像(妄想?)は,誰しも一度ぐらいはしたことがあるでしょう。まさにあれをそのまま地で行っている映画です。

★★★


2020年3月13日

痩せゆく男(原題:Thinner)(アメリカ,1996)

スティーブン・キング原作のホラー。肥満気味の弁護士ビリーが夕食の帰りにロマ(ジプシー)の老女をひき殺してしまう。弁護士と検事と警察署長はこの事件をもみ消した。すると,ロマの長老に呪いをかけられる。不気味な長老に”Thinner"といって顔をなでられると,それからというもの,食べても食べても痩せていく。

本人にやましいところがあるもんだからどうにも歯切れが悪く,やがて第三者に攻撃の矛先が向く。ストーリーは単純だけど,人間心理の痛いところを突いてくる。差別もテーマ。

★★



2020年3月4日

レッド・プラネット(原題:Red Planet)(アメリカ,2000)

2025年,地球の環境汚染が限界に達し,テラフォーミングしておいた火星に調査しにいく「マーズ1号」の乗組員のサバイバル。

悪くは無いけれど,全体として薄い。重大な謎が隠されているのかと思いつつ,想定内だし,最後まで何か大きな事故もあっと驚く種明かしもない。ピンチを増幅する敵も,いずれもあんまり脅威ではない。冒頭で登場人物紹介がてらキャラ説明があるが,そのキャラが立つほどセリフや行動に目立つところはない。むしろ,ああして言語化して最初に説明しちゃうところが,端折り感があってイマイチ。

事件らしい事件は起きず,なのになぜか最後はカップル成立,というアメリカ映画の黄金パタンで締めるところも,どうなんだ。これよりは,超低予算B級映画の「処刑惑星」の方がまだシュールで良かった。




2020年2月5日

アンノウン(原題:Unknown)(アメリカ・ドイツ,2011)

学会参加のためにドイツにやってきた生物学者のマーティン・ハリス博士。しかし,乗っていたタクシー事故で重傷となり,病院に担ぎ込まれる。一命を取り留めたものの,一緒にやってきた妻は自分を知らないという。しかも,その妻と共にいた見知らぬ男が「マーティン・ハリス博士」として学会参加している!

これは面白い。状況はあまりにも不可解であり,主人公の不安たるやいかほどかと想像する。不可解な場面が次々と現れ,見ているこっちも全然見えてこない。しかし,終盤その謎が段々と明らかになる!やられた~。すっかりやられました。オススメです。

★★★


2020年1月14日

激突!(原題:Duel)(アメリカ,1971)

スピルバーグの出世作。原題はduelなので,「決闘」の方が中身に合っていると思うけど,まぁ,「激突!」。「決闘」とすると西部劇みたいだから,車と車の争い,ということで「激突」にしたのかな。

昨今は「あおり運転」が社会問題となっていますが,いっそ,この「激突!」の鑑賞とレポート提出を自動車教習所の必須科目にすれば良いかも。

しかし,すごいのは,撮影に使ってる道具はせいぜい車2台(自家用車とトラックとスクールバス)ぐらいで,あとはレストランでの撮影と荒野でのカーチェイス。出演している俳優・子役も数えられるぐらいの数。90分と短い映画(もともとテレビ映画らしい)の中の大半は,追いかけっこしてるだけなんだけど,目が離せない。なんせ,トラック気持ち悪いぐらい恐い。これだけの予算でこれだけ魅せるスピルバーグはやっぱりすごい。

★★★


2020年1月12日

ファイト・クラブ(原題:Fight Club)(アメリカ,1999)

こういう映画か~。途中から,もしかしたらそうかなと思ってみていたら,やっぱりそうだった。何かもっと,人間臭い成長映画かと思っていたら,まったく全然。これは範疇としては,サイコスリラーでしょうか。書くとネタバレになるので書きませんが,映画らしい映画で,面白いです。1999年公開ですから,20年経ってようやく見ました。え?もう20年も前?ってぐらい,今見ても全然新鮮です(多少,ブラッド・ピットが若くて細マッチョだなぁぐらい)。

★★★


2020年1月1日

イグジステンズ(原題:Existenz)(カナダ・イギリス,1999)

クローネンバーグの映画。なんだこれは。変な映画です。褒め言葉として,奇天烈な映画。クローネンバーグの映画(有名なところでは『スキャナーズ』や『ヴィデオドローム』とか)は,見たことあるようなないような,でも実際,見てないかも。『ザ・フライ』ぐらいか。

近未来?異世界?とにかく,生っぽいゲーム機(ソフトなハード)を使って,現実と虚構の区別がつかないぐらいリアルなゲームの世界に入っていく。そんな話。そもそも,どこから現実でどこから虚構なのか。

描写も気持ち悪いし,設定もクラクラして,癖になります。有名どころも見てみよう。

★★★